ART iT Japanese-English bilingual art quarterly

Interview
草間彌生 永世に伝える愛のメッセージ
ポートレート:永禮賢
取材・文:柳下朋子
odani motohiko
Evening glow - Dots Accumulation, 1999
41cm diameter
Photo Nagare Satoshi

ペンの先から迷いなく伸びていく無数の線、反復され増殖していく細かな模様。F100号の大きなキャンバス50枚に黒いペン1本で立ち向かう姿が、ドキュメンタリー映画『≒ニアイコール草間彌生』の中に活写されている。過去には、ニューヨークでのハプニングを撮影した『草間の自己消滅』(1968)などを発表しているが、いまも気持ちは変わらないと言う。

「そのときどきにメッセージは変わってきますけど、もとは同じです。私自身の姿と制作過程とを両方、生きている内にでもたくさん撮っておいて、後世の人に末永く見ていただきたいと思って。撮影中はカメラがあるのを忘れるほど熱中して描きました。次から次へとアイディアが出てくるの。早くしないと間に合わないからキャンバスを5、6枚用意しといて一気に描くわけですよ。昼の12時から夜までぶっ通しで描いて、帰るときには目がくらんで道がでこぼこに見えるくらい。精神と肉体を使い切りました」

愛はとこしえーこれまでも数々の作品を通じて伝えつづけてきたメッセージが、その最新作のタイトルだ。草間にとっての「愛」とはどんな存在だろうか?

「愛はいつも感じています。人間の生きていることに対して、私も含めたすべてのものへ対して『愛はとこしえ』。人々が戦争やテロなどに巻き込まれず、平和に暮らせるように、生涯を渡って永世までそのメッセージを伝えつづけたい。そういった思いで絵や彫刻やファッションや映画、いろいろな表現をしてきましたの」

50枚の完成を迎えた後、再び描きはじめたという最新の51枚目の作品を前にして、草間芸術に終わりはないとあらためて知らされる。病や死の予感と常に向き合いながら、永遠の生を得ようとするかのように点や線のひとつひとつを描いてゆく。芸術家になってよかったという喜びは尽きない、と語る草間は、最後に自作の詩の朗読で応えてくれた。

「……人生は美しい そして自滅の響きにこたえるべく、
今日の一日を 明日の一日を
わたしは死を乗り越えて生きていけるだろうか。
そして永遠に見ることのない 生と死の輝きのなかを
果てることもなく終わりまでも生きたいと思う。
自殺よ待ってくれ、わたしは生きていかれるのだろうか
わたしの芸術に聞いてみる」
(「草間彌生より愛のメッセージ」より)

初出:『ART iT 第18号』(2008年1月発売)


runa islamくさま・やよい
前衛芸術家、小説家。幼少より水玉と網目模様を用いた幻想的な絵画、彫刻、版画等を制作。1957年に単身渡米し、60年代後半、N.Y.にてボディペインティング、前衛ファッションショー、反戦運動などのハプニングを行う。73年に帰国後は東京在住。映画『≒草間彌生〜わたし大好き〜』が2月より全国で順次公開される。50枚の最新作品を収めた本「わたし大好き」も発売中。

映画『≒草間彌生〜わたし大好き〜』 www.kusama-loveforever.com