宇治野宗輝:Crossband


Above two photos
Pickle-Up, 2008
Mixed media



Above three photos
Plywood City, 2008
Mixed media
Photos courtesy the artist and PSM, Berlin
9.4 – 10.4
PSM Sabine Schmidt (ベルリン)
文:かないみき
自動車修理工場などが軒を連ねる広くグレーな一帯。その一角から、混沌としたリズムが聞こえてくる。大きな扉の向こうには、何が待ち受けているのだろうか。コンクリートの床、ブロックが剥き出しになった壁。荒れた天井に取り付けられた蛍光灯が、その音の主を照らしていた。巨大なトラックが小さな乗用車に、カークラッシュさながらの迫力でのし上がる。錆びたワイパーが弱々しくも的確にリズムを刻み、ウィンカーもそれに合わせて点滅した。その横で、クレートでつくられた都市の縮図も乱雑に呼吸をはじめる。四角い木箱が立ち並ぶ様子はビル群、天井へとのびるコードは電柱をつたう電線のようだ。そこにはミキサーや掃除機、ランプなどの家電品が取り付けられ、それぞれのモーター音がピックアップで拾われている。ラジオからも途切れ途切れに音が流れる。どれも使い込まれたと言うよりは、かなり古い家電品だ。
「今は、この地上の全ての物質が有限であることが明らかになった時代で、全てのものがリサイクルされるべく動いている。これは、現代を生きる我々全員が中古主義者であるという意味ではないかと思いました。再生紙や瓶だけではなく、『新品』の商品を買ったとしても、再生された材料や素材、パーツが使用されています。ピカピカの新品の未来は過去のものとなったのです。そんな時代に、都市のジャンクや中古品をそのまま組み合わせて彫刻をつくれば、僕が育った高度成長時代からバブル期のアートとは全く違うものになるのでは? と実験を始めました」と宇治野は言う。
作家は本展で場所の歴史性にも注目している。そこは旧東ドイツ時代からの自動車修理工場地帯であり、作品に選んだ自動車は、どちらも旧東ドイツ製のものだ。小型の乗用車は、1950年代後半から生産され、今も「トラビ」の愛称で親しまれるトラバント。若き日への郷愁を抱きつつも、かたちを変えてアートとなり、動いているその姿に目を見張る鑑賞者も多い。
オープニングのパフォーマンスでは、2度も招かざる客、警察官がやって来た。2度目には、戦闘態勢を整えた援軍まで現れ、その場は一時騒然となった。宇治野のサウンドスカルプチャーを不審物として見回る彼らと、その光景を見守る観客。警官と観客との間に、衝突も起きた。結局オープニングは深夜1時前に打ち切りとなったが、ドイツの主要紙、FAZには「警官が許可するものよりも、秀でたもの」という見出しで、宇治野のパフォーマンスを讃える記事がおどった。ドイツ、アメリカ、イギリス、韓国など、海外での活動が増える作家の、日本での更なる評価にも期待したい。
登録日:2008年10月15日