ART iT Japanese-English bilingual art quarterly

展覧会レビュー

©MURAKAMI






Installation views of ©MURAKAMI at The Geffen Contemporary at MOCA, 2007. All photos by Brian Forrest, artwork ©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All rights reserved.

10.29 - 2.11
ロサンジェルス現代美術館(MOCA)ゲフィン・コンテンポラリー・アット・MOCA
www.moca.org


文:神谷幸江

アートは買うことのできるプロダクトである。

ロサンジェルス、リトルトーキョーにあるMOCA、3500平米に及ぶスペースで繰り広げられている村上隆の一大ソロショーは、このメッセージを明確に訴えてくる。オタクの夢が特化された立体となったフィギュアからヴィトンのバッグまで、鮮やかな色、つややかな表面、大胆にデフォルメされた有機的な形が織りなす「村上プロダクト」の数々が目の前に並び、展覧会を観ているはずが、手に入れたい、と思わせる消費欲と所有欲をチクチクと刺激してくる。

本展キュレーターのポール・シンメルは、90点を越える展示作品を「DOBくん」以降の作品に焦点を当てて構成している。それは1994年に村上がPS1のレジデンスプログラムで初めてアメリカに滞在して以来の彼の歩み、言い換えれば「アーティスト村上」がアメリカなるものに遭遇し、欧米の価値観の中で日本の出自を強く意識するに至ってからの戦略、制作の方向性を浮き上がらせるものになっている。アメリカン・アニメのアイコン、ミッキーマウスを連想させる初期のDOB君が異形化していく姿、90年代後半に展開したサイボーグフィギュアのシリーズ、さらには仏教といったヒッピー世代ならずとも敬意を向ける東洋の概念世界など、村上はグローバル化によって拡張する世界の中で、唯一無二の存在を主張している。そしてアーティストとしてのサバイバルのための、出自の文化の引用、翻訳していくことを通じて、欧米主導の世界のアートシーンで村上ブランドを確立くのである。

田宮模型のロゴ「TAMIYA」を用いた90年代初期から、ブランディングは村上の大きな関心事だった。今回の展覧会ではお花印のカーペットが敷かれ、目玉プリントの壁紙があり、展示空間は村上ワールドを徹底して演出する趣向が見られる。「村上隆」というひとりのアーティストがカイカイキキというカンパニーを通じて、MURAKAMIというブランドを作りあげていく。カイカイキキが生産するプロダクトは、マルチプルであるがゆえにこそ広く村上印のブランドの価値を定着させていく。その試みは食玩からTシャツや出版物と、ショールームのように並んだカイカイキキ製品のアーカイブ展示に見ることができる。

そして今回ブランディングの究極の形態が会場内に現れたルイ・ヴィトン・ショップだろう。単なるミュージアムショップと想像する事なかれ。ギャラリー内の一段高い場所に構えたショップの入口には輝くロゴ、 村上プロデュースのモノグラムバッグの並んだ店内にはルイ・ヴィトンの販売員が常駐する。ヴィトンというブランドと手を組み最強のブランディングを行う一方で、商品そのもの、ショップそのものを美術の文脈に引き込んでしまう、見事なコンセプチュアルワークである。

アーティストの重ねてきた言葉やキュレーションよりもむしろ直接的に、物議を醸し出してきた村上の意図を伝える個展。328ページの重厚なカタログもあわせ、その多作ぶり、見応えあるショーだ。

付記:本展はブルックリン美術館(2008.4.4 - 7.13)、フランクフルト近代美術館(2008.9 - 2009.1) 、グッゲンハイム美術館ビルバオ(2009.2 - 5)に巡回予定。


登録日:2007年12月12日