ART iT Japanese-English bilingual art quarterly

展覧会レビュー

仙台アートシティプロジェクト:ART仙台場所2008


山本耕一郎「一番町四丁目のうわさ」

スー・ヘイドゥ「箱って?」

KOSUGE1-16「ドンドコ!巨大紙相撲〜仙台場所〜」

4.29 - 5.6
仙台市内複数会場
仙台アートシティプロジェクト

文:ウダモトコ

街の活性化をテーマに掲げたアートプロジェクトは決して珍しくはないが、主催者側だけで盛り上がって終わるケースを幾つも見てきた。本プロジェクトはどう街と関わるのだろうか?

JR仙台駅周辺の第一印象はお洒落な地方都市。ブランドが軒を連ねるショッピング・アーケードが交差する。駅から10分ほど歩いていくとプロジェクトのメイン基地、昔ながらの小売店が並ぶ一番町四丁目商店街がある。アーケードに沿って設置されたポールには、黄緑色のプロジェクトフライヤーが風にはためく。吹き出しアートの山本耕一郎の作品がいたるところで街の“噂”を発表し、通行人が足をとめて読み入る。声に出して読みあげながら笑い合うカップルもいる。商店街の中程にはのぼりがあり、それに従って路地を入るとテントが見える。中ではスー・ヘイドゥと参加者が、箱を交換しながらそれにまつわる話で盛り上がっている。 金銭的価値では計れない感情的な価値を、実際のオブジェクトをとおして交換しようというのだ。その横では、中川和寿が、いたずら書きされた甘味処の外壁を塗り直して、黙々と新しい作品を描いている。静かだが存在感がある。人気のその甘味処では、人々が左右のプロジェクトの進行状況を気に掛けながら順番待ちしている。

もうひとつの会場、せんだいメディアテークに足を運ぶ。KOSUGE1-16による「ドンドコ!巨大紙相撲〜仙台場所〜」のワークショップがロビーで開催されている。外国人家族を含む多くの老若男女のチームが、巨大な紙相撲力士作りに夢中になっている。同会場内の図書館利用者に問いかけられた子供が、手を休めずに自分のデザインを一生懸命彼らに説明する光景が微笑ましい。完成した各紙力士は、最終日に会場内に設置された土俵でのトーナメントに登場する。平手で土俵を叩く音が会場全体に響き渡り、歓声や拍手に見学者もいつの間にかその熱気に巻き込まれる。

141ファッションビルでは 開発好明が「仙台ZOO」と題する動物園を披露。アニマルプリントを着ている通行人など、商店街周辺で見つけた動物にまつわるものを写真に収め、展示した。ほかにも、地元商店の包装紙で花をつくる志村春海のSAP花パフォーマンスや、アーケードの天井に張り巡らせた、門脇篤の毛糸の川のインスタレーションや、プロジェクト・マネーと商品を交換する村上タカシの循環型のアート作品などがあり、会期中の8日間は“街”を歩けば“アート”にあたる。

気がついたら巻き込まれているこの空気。五感の刺激され方が“祭”に近い。プロジェクトの規模を大きくすることは可能だろう。しかし、今回垣間みた“ご近所付き合い”を感じる強いコミュニティー意識は、懐古的であると同時に新鮮だった。規模の拡大とともに失ってほしくない要素である。


登録日:2008年06月04日